クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
そもそも、緋色くんどうして――…
「し、白凪…」
「緋色く……なんで……」
「っ、ごめん……!!」
緋色くんも立ち去ってしまい、私一人だけが残される。
緋色くんの顔はすごく赤かった。
前髪に隠れてちゃんと見えたわけじゃないけど、耳も赤かったから多分間違いない。
私は、翠夏ちゃんのことも緋色くんのことも傷つけたのかもしれない。
違う、絶対そうなんだ。
私、すごく最低なことしてた――?
ブーブーとスマホのバイブレーションが鳴る。
蒼永から…電話だ。
「……っ!」
もしかして、手紙に気づいてくれたのかな?
でも、今は出られない。
蒼永になんて言えば……。
「…ごめんなさい……っ」
通話マークをタップすることはできなくて、ひたすらバイブだけが鳴り響く。
やがて鳴り止むまで、私は指を動かすことはできなかった。
覚束ない足で元いた教室に戻る。
目の前にはまだたっぷりとある栞の山。
「やらなきゃ……」
現実逃避をするように、再びパチンパチンとホッチキスを留める。
ホッチキスを留める音だけが、静寂の中で私の耳に届く音だった。