クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
10.真っ直ぐな想い side.A
「ただいま。咲玖帰ってる?」
ワックに寄って帰らないかと言われた空手部仲間の誘いを断り、真っ直ぐ直帰した。
たまに一緒に行くこともあるけど、今日は1秒でも早く帰りたかった。
「咲玖?」
電気が点いてなくて真っ暗だ。
まだ帰ってないのか?さっき電話しても出なかったし。
リビングの電気を点けると――
「わっ」
「……あ、蒼永。お帰りなさい」
ソファの上に体育座りしている咲玖がいた。
「ただいま…何してたの?」
「ちょっと瞑想したくて…」
瞑想?
咲玖の目の前には火を灯したキャンドルが置かれている。
ほのかに甘い香りが漂っているので、多分アロマキャンドルだろう。
「それ、去年の誕プレに春日井がくれたやつ?」
「そう…火を見てると落ち着くって聞いたから、火を見ながら瞑想してたの」
「そうなんだ…」
なんで急に瞑想なんかし始めたんだろう…。
咲玖はたまに突拍子もないこと始めるからな…。
俺が思ってたのと全然違って、だいぶ戸惑いが隠せない。
「あのさ、」
「蒼永。」
「うん?」
「大事な話があるんです」
「あ、うん」
「聞いてもらえますか…」
どうしたんだよ、そんなに改まって……。