クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
その時点で、俺はある程度覚悟を決めた。
黙って咲玖の言葉を待つ。
「わっ私、緋色くんに抱きしめられてしまって…!」
「ああ…」
「しかもそれを、翠夏ちゃんに見られてしまって…」
「…そっか」
「私、咄嗟のことでびっくりしちゃって、すぐに振り解けなかったの!ごめんなさい!
…そのせいで、翠夏ちゃんのこと傷つけてしまった。
蒼永も、こんな話聞きたくないと思うけど…黙ってるのも違うと思って。ごめんね…」
咲玖のことだから、きっとたくさん悩んだんだと思う。
一人ですごく落ち込んで、だからアロマキャンドル見つめながら瞑想して。
どうしたらいいのか、必死で考えてたんだろうな――。
俺のこともすごく悩んで考えてくれたんだろう。
「あの、あのね…すっごく自惚れてるかもしれないんだけど、緋色くん…私のこと好きなのかなって思って。
緋色くんは理由もなくそういうことする人じゃないと思うから、じゃあなんで?って考えた時に、そうなのかなって…」
「多分そうだよ」
「気づいてたの?」
「まあ…何となくね」
「そっか……」
明らかにシュンとして悲しそうにする咲玖。
「私、二人のこと傷つけることしちゃってたんだよね…」
「咲玖…」
「緋色くんとは、ただ友達になりたかっただけなの…大志くんみたいに仲良くなれたらいいなって…でも、無理だったのかな」