lens

（わたしはこんなにも好きなのに、一にとっては私はただの幼なじみで、恋愛対象じゃないんだ……）

嫌というほど残酷な真実を突き付けられ、静音の目の前がぼやけていく。そんな静音にさらに残酷なことを一は言う。

「今度、デートに芽衣を誘おうと思うんだけど、女子ってどんなデート喜ぶもんなの？水族館とか？」

「そんなの、二人で話し合って決めることでしょ？何で私に訊くのよ」

静音が胸を痛みを感じながらそう返すと、一はニコリと笑って「確かにそうだな！さすが静音！」と笑う。そして、芽衣と相談すると言い自分の頼んだハムサンドとコーヒーのお金を置くとすぐにカフェを出て行ってしまう。今までは、いつもカフェで話をした後一緒に家まで帰っていた。静音が置いて行かれるのは、初めてのことである。

カランコロン、とカフェの出入り口に取り付けられているベルが音を立てる。その音は、一がこのカフェから出て行った証拠だ。途端に、静音の目からずっと堰き止めていたものが溢れていく。