lens
鼻を啜り、カフェの明かりに照らされて煌めくものを拭い、静音はパフェをかき込むように口の中に入れる。カフェのマスターが「新商品なんだよ」と自信ありげに言っていたそのパフェの味は、静音にはわからなかった。

ふと窓の外を見れば、一が耳にスマホを当てながらのんびりと歩いている。幸せそうにその目は細められ、口角は上がり、嫌でも電話の相手が誰なのかがわかり、静音の胸が痛む。だがその手は、静音のかばんの中に入れられた可愛らしいパステルカラーのトイカメラにあった。

写真部の静音が無意識に被写体にしたいと思うほど、今の彼は輝いて見えたのだ。



静音と一は、保育園の頃からずっと一緒に過ごしてきた。静音の親と一の親は同じ小学校の同級生だったらしく、幼い頃から互いの家を行き来する間柄となっていた。

幼い頃から内気だった静音は、ヤンチャな男の子の揶揄いのターゲットにされることが多かった。男の子に揶揄われるたび、静音はいつも一に守られてきた。
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