共犯契約〜ヤクザの跡取りに魅入られて〜


 
「テメェ何睨んでんだ!? 殺されてぇのか!?」
「あぁ!? そっちが先に見てたんだろうが!!」
「………………」

 爽やかな朝に似つかわしくない罵詈雑言が飛び交う学校敷地内、私は校門を潜った瞬間からそこら中で勃発する乱闘や流血騒ぎに巻き込まれぬよう気配を消し、真っ直ぐに昇降口を目指す。

 入学して一ヶ月、人間とは面白いもので、この治安の悪い状況に毎日身を置けば自分の立ち振る舞いの正解もわかってくる。
 兎に角気配を消す、目を合わせない、絡まれたらひたすら謝罪、盗難が日常茶飯事なのんで小銭のみ小さな財布に入れ下着の中に入れておく。休み時間は全て女子トイレの個室で過ごす。

 これを徹底していたら、最初は女ということで絡まれることも多かったが、今では空気として扱われることに成功している。


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