愛が芽生える刻 ~リラの花のおまじない~
ヨーゼフ・フォン・シュトラウスの葬儀は
シュトラウス家の領地でしめやかに行われた。
祖父の葬儀にはユリウス国王はじめ、
マグノリア国内の重臣たちが参列したほか、
ウィステリア王家からも弔意を示す盛大な花が届いた。

エルマーは喪主として、
葬儀に関する一切を取り仕切らねばならず、
悲しみに浸る暇もないほど目の回るような忙しさだった。
そんなエルマーを支えてくれたのは、他ならぬソフィアだ。
ソフィアはヨーゼフの訃報を知ると、
すぐさま休暇願を出してシュトラウス家に飛んできてくれた。
隣の領地どうして昔から付き合いのあるアンシュッツ子爵家は
ソフィアのみならず家族総出でエルマーのサポートを行ってくれたので、
エルマーは弔問客の接待に専念することが出来た。

敷地内の小高い丘に建てられたヨーゼフの墓石の前で
エルマーが佇んでいると喪服姿のソフィアが現れる。
泣いていたのか目が心なしか赤い。
「実家の庭から摘んできたの。ヨーゼフ様が好きだったお花だから。」
ソフィアはそう言って真っ白なリラの花束を墓石に供えると、
しばしの間祈りをささげた。
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