愛が芽生える刻 ~リラの花のおまじない~
だが、内戦でリラの花咲くこの公園が滅茶苦茶に破壊されてしまう。
これにはアンシュッツ家同様にヨーゼフも大変心を傷めていた。
せめてもの慰めになればと、
ヨーゼフは自邸に植わっていたリラの木を1株、
アンシュッツ家の屋敷の庭に移植したのだった。
今日、ソフィアが摘んできてくれたのはその木に咲いていたリラの花である。

その時、ヨーゼフの最期の言葉が蘇った。
『今ある繋がりを大切にするように』
やはり、自分の妻になる女性はソフィアがいい。
何の見返りも求めず、一生懸命に尽くしてくれた姿が愛おしいと思った。
エルマーはリラの花束にそっと口づけを落とす。
「大切なことに気づかせてくれてありがとう、爺ちゃん。」

エルマーが職務に復帰してしばらくすると、
ユリウスから彫像の除幕式を執り行いたいという相談が寄せられた。
エルマーもどのような彫像なのか完成形はまだ見ていない。
公務やその他の王室行事との調整を兼ね合いで、
除幕式は半年後のヨーゼフの誕生日に執り行われることになった。
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