愛が芽生える刻 ~リラの花のおまじない~
そして半年後。
いよいよ彫像のお披露目の日である。
城内の彫像が設置されるのは約60年ぶりとあって、
設置場所となっている議事堂廊下に繋がるホール前は人だかりが出来ていた。

エルマーは何だか不思議な気分だった。
彫像となった人物はもれなくマグノリアの学校の歴史の授業で勉強する。
ということは、祖父も来年からは教科書に掲載されるのだろう。
自分の祖父が歴史上の人物になるのだ。
いまだにピンとこない。

今日はシュトラウス家に仕えてくれていた使用人たちも
ゲストとして来てくれている。
そしてアンシュッツ子爵家の人々も。
家族と一緒に今か今かと興奮しているソフィアと目が合うと、
ソフィアがにっこりと笑って大きく頷いてくれたので
エルマーも頷き返す。

ユリウスの合図で
巨大な白い布がかけられたヨーゼフの彫像が運ばれてくる。
(あぁ、爺ちゃんは本当に歴史上の人物になるんだな。)
ユリウスがヨーゼフの生前の功績を聴衆に向けて紹介する。
言葉の端々にヨーゼフへの感謝の気持ちがにじみ出ていて、
エルマーも思わず胸が熱くなる。
「では、ヨーゼフ・フォン・シュトラウスの孫であり、現シュトラウス公爵エルマー殿にこの幕を降ろしていただこうと思う。」
ユリウスの言葉を受けて、エルマーは白い布に手をかける。
そして、深呼吸をすると一気に幕を引き下ろした。
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