愛が芽生える刻 ~リラの花のおまじない~
それに。
ずっと思い続けてきた王女と再び結ばれた主の幸せそうな顔を見ると、
自分は一体何をしているんだという気持ちにもなって来る。
ここらで身を固めてシュトラウス家の後継ぎとなる男の子を
祖父に見せてやるべきではないだろうか。

(でもなー。結婚は相手がいることだし。玉の輿狙いの女はご免だ。)
自分に声をかけてくるのは爵位の低い貴族の家の娘が多い。
結婚して少しでも位の高い家の女主人になろうという野心が透けて見えて興醒めだ。
一方、家柄の良い家は娘本人というより、その親が声をかけてくる。
公爵家と縁組することで家門の安泰を図りたいのだろう。
ということは自分と結婚したいというより、シュトラウス公爵家と結婚したいというわけだ。
そう考えるとやはり結婚に希望が持てない。
エルマーは思わずため息をついた。

「ため息をついたら、幸せが逃げてしまいますよ。エルマー。」
後ろから女性の声がしたので思わず振り向く。
声をかけて来たのは沢山のシーツを抱えたソフィアだ。
彼女はエルマーの幼馴染で王城で侍女として働いている。
子爵家の娘なので貴族令嬢ではあるのだが、
家がそれほど裕福ではなく、家計を助けるためにと働いているのだ。
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