愛が芽生える刻 ~リラの花のおまじない~
ユリアーネの誕生日会当日。
失礼のないように礼装に身を包んだエルマーは
カーレンベルク侯爵邸を訪ねた。

ゲストの出迎えをしていたユリアーネは
エルマーの姿を見つけると満面の笑みで駆け寄ってきた。
「来てくださったのですね、シュトラウス公爵様!お待ちしてましたの。」
「お招きいただき光栄です、侯爵令嬢。ささやかですが、令嬢にお祝いの花束を持参いたしました。」
「まぁ、嬉しい。ありがとうござ…います。」
エルマーが差し出した花束を見て、
ユリアーネは顔を若干ひきつらせた。
それもそうだろう。
エルマーが持ってきたのは黄色いチューリップの花束だったのだから。
黄色いチューリップの花言葉は「望みのない恋」。

誕生日会自体はいたく和やかに進んだ。
笑顔を引きつらせていたユリアーネも、
すっかりいつも調子だ。
席次が隣のエルマーには全く話しかけてこない以外は。
そんな娘を見て、照れて声がかけられないのだと勘違いしたカーレンベルク侯爵が
ユリアーネにエルマーを中庭を案内してあげたらどうかと提案する。
あわあわするユリアーネを横目に、
エルマーは「ぜひお願いします。」と返事をする。
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