愛が芽生える刻 ~リラの花のおまじない~
「エルマー、私の顔を見ないで。私、今きっと嫉妬でとてもひどい顔をしているわ。」
「嫉妬?」
「あなたになんのためらいもなく近づくことが出来る全ての女性に、私は嫉妬してる。」
ソフィアの言葉を聞いて、
エルマーは堪らなくなってソフィアを抱きしめた。
ソフィアもそれに応えるようにエルマーの背中に手を回す。

「それ本当?俺、期待してもいいの?ソフィアが俺のこと好きだって。」
「でもエルマーは?エルマーはユリアーネ様と・・・」
「それは断じて違う。ソフィア、誤解だ。あの写真に写っているのは確かに俺とカーレンベルク侯爵令嬢だが、俺は彼女のことをこれっぽちも愛していない。恥ずかしい話だが、ウィステリアのマスカレードに参加した時に羽目を外し過ぎて彼女の罠にまんまと引っかかっただけだ。俺もソフィアのことが大好きだ。」
エルマーの告白にソフィアの目からさらに大粒の涙があふれ出る。

「でもエルマーが良くても、世間が私たちのことを認めないわ。貴賤結婚になってしまう。」
ソフィアが躊躇してしまうのは、結局ここなのだろう。
王族や公爵家の結婚相手は最低でも伯爵家という暗黙の了解みたいなものがあり、
ひと昔前は貴賤結婚をした貴族は爵位が没収されていた。
こうなることを恐れているのだ。
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