愛が芽生える刻 ~リラの花のおまじない~
その後、エルマーとソフィアの婚約は正式に発表された。
ジゼルの予想通り、エルマーを狙っていた令嬢たちからは怨嗟の声が上がったが、
次期公爵夫人になることが決まったソフィアに
表立って嫌がらせをしてくる者はいなかった。

時を置かずして、エルマーとソフィアは故郷に里帰りする。
結婚の報告のためだ。
ソフィアの両親は結婚の申し出に身分差がありすぎて畏れ多いと言いながらも、
祝福してくれた。
結婚式にはアンシュッツ家の家宝であるアンシュッツ・ヘイロウ・ティアラを
金庫から出してくれるそうだ。
ソフィアは子供の時からいつかこのティアラをつけることが夢だったので大喜びだった。

アンシュッツ家への挨拶のあと、
そのままシュトラウス家へと向かう。
まず訪れたのはヨーゼフの墓だった。
結婚の報告をしてもなにも反応が返ってくるわけではなかったが、
祖父は祝福してくれているにちがいない。
妹のヴェレーナをはじめ、シュトラウス家もソフィアとの結婚に大喜びだった。
「高慢ちきな鼻持ちならない女が義姉になるのは御免だけど、ソフィなら大歓迎よ!」

誰もがソフィアを小さい頃から知っているので、
ソフィアがこの家の中にいることに何も違和感がない。
昔から家族だったかのようだ。
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