さくらの記憶
グスン、とさくらは涙ぐみながら道を歩く。
「怖いよー、辺りも暗くなってきたし。どうしよう、誰か通りかからないかな…」
一縷の望みを託しながら人影を探すが、闇が深くなるばかりで恐ろしいほど静けさが広がっている。
「なんで?ねえ神様、私、何か悪いことしましたか?23年間、そりゃ少しはヤサグレた時もあったかもしれないけど、清く正しく、真っ直ぐに生きてきたつもりです」
ブツブツと呟きながら、ひたすら田舎道を歩く。
「おばあちゃんを心配して、ゴールデンウィークに旅行にも行かずに田舎までやって来たこの私に、これはあまりにも酷い仕打ちではございませんか?え、待って、雨まで降ってきたー!」
ポツポツ、と顔に感じた雨粒は、あっという間にザーッと音を立てて激しさを増した。
「う、嘘でしょ…。ま、待って。びしょ濡れ、スマホと財布がー!」
雨に濡れて色が変わり始めたサコッシュを、さくらは急いで肩から外して、左手に持っていた大きなナイロンのスポーツバッグに入れようとする。
だが、急いでいる時に限って不運なことは起きるのだ。
貴重品を入れたサコッシュが、さくらの手からツルリと雨で滑り落ちた。
「いやー、もう!」
すぐに屈んで拾おうとするが、サコッシュが落ちた道の脇は斜面になっており、雨を含んだ土でぬかるんでいる。
「あーあ、靴も服も、もう泥々。スマホと財布、無事かしら」
なんとか手を伸ばしてサコッシュを掴もうとした瞬間、さくらは足を滑らせて、斜面をザーッと落ちていった。
「怖いよー、辺りも暗くなってきたし。どうしよう、誰か通りかからないかな…」
一縷の望みを託しながら人影を探すが、闇が深くなるばかりで恐ろしいほど静けさが広がっている。
「なんで?ねえ神様、私、何か悪いことしましたか?23年間、そりゃ少しはヤサグレた時もあったかもしれないけど、清く正しく、真っ直ぐに生きてきたつもりです」
ブツブツと呟きながら、ひたすら田舎道を歩く。
「おばあちゃんを心配して、ゴールデンウィークに旅行にも行かずに田舎までやって来たこの私に、これはあまりにも酷い仕打ちではございませんか?え、待って、雨まで降ってきたー!」
ポツポツ、と顔に感じた雨粒は、あっという間にザーッと音を立てて激しさを増した。
「う、嘘でしょ…。ま、待って。びしょ濡れ、スマホと財布がー!」
雨に濡れて色が変わり始めたサコッシュを、さくらは急いで肩から外して、左手に持っていた大きなナイロンのスポーツバッグに入れようとする。
だが、急いでいる時に限って不運なことは起きるのだ。
貴重品を入れたサコッシュが、さくらの手からツルリと雨で滑り落ちた。
「いやー、もう!」
すぐに屈んで拾おうとするが、サコッシュが落ちた道の脇は斜面になっており、雨を含んだ土でぬかるんでいる。
「あーあ、靴も服も、もう泥々。スマホと財布、無事かしら」
なんとか手を伸ばしてサコッシュを掴もうとした瞬間、さくらは足を滑らせて、斜面をザーッと落ちていった。