さくらの記憶
栗林は、何度もさくらにありがとう!と礼を言い、さくらもそれに応えようと必死に頑張った。

結果として、それは北斗の側にとっても良い状況となり、さくらは橋渡しのように双方にとってより良い提案をすることができた。

数ヶ月が経った頃、さくらは栗林と一緒に現地に視察に向かう。

駅に着くと、北斗が車で迎えに来てくれていた。

さくらは、久しぶりに会う北斗に顔が緩んでしまったが、あくまでも仕事中と、必死に真顔で対応する。

北斗は、車の中から栗林に説明する。

「この辺りを、小さな1つの町にすることから始めたいと思っています。まずは、住居とスーパーと病院。それから、保育園と学校の整備も、市長と話し合って進めています」

そこは空き家が並んでいる一帯だったが、新たに家を建て替え、道を整備し、環境を整えていけば、住みやすそうな場所だった。

(子ども達が野山を駆け回ったり、川で釣りをしたり、木登りしたり…。いいなー、そんな環境でのびのび育って欲しい)

「この区の区長や市長とも連携して、町おこしも大々的に進めています。田舎への移住を呼びかける広報も、全国に展開する予定です」

北斗の説明に、なるほどと相槌を打ちながら、栗林は次々と車内から写真を撮る。
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