さくらの記憶
北斗が助産師に連絡すると、すぐに駆けつけてくれる。
和室に大きなシートを広げて、出産に備えた準備を始めた。
さくらは、病院で健診を受け、問題ないから自宅出産でも構わないと言われ、そうすることにしたのだった。
「あら、子宮口も随分開いてるわね。経産婦さんだし、この分だと、夕方には産まれるかな」
「ええ、ほんとに?まだ全然痛みも強くないけど…」
だが、昼食を食べてからは、そんな余裕はなくなった。
陣痛の波が強くなり、さくらは北斗の手を握りながら痛みをこらえる。
「はい、そろそろいきんでもいいですよー」
助産師に言われ、さくらは大きく息を吸ってお腹に力を入れる。
赤ちゃんが、どんどん下がってくるのが分かり、さくらはその動きに合わせるように、ふーっと長い息を吐く。
「上手よー。はい、もう一回」
「さくら、頑張れ!」
そう言って励ます北斗に頷くと、さくらはまた大きく息を吸った。
グーッとお腹の下の辺りに力を込めると、助産師が、もういいわよ、力を抜いてと言う。
そして間もなく…
「ホギャーホギャー!」
「元気な女の子よ。おめでとう!」
さくらの目から、涙がこぼれる。
「さくら、ありがとう!よく頑張ってくれた」
北斗も感極まって声を震わせた。
助産師が赤ちゃんをタオルに包んでさくらの胸に抱かせてくれ、二人で顔を覗き込む。
「可愛いなあ」
「うん。穂高に似てるね」
「ああ。でも、目と口がさくらにそっくりだ」
「そう?北斗さんにも似てるわよ」
すると、助産師が笑う。
「どっちにも似てるわよ。だってあなた達二人の赤ちゃんなんだから」
「確かに」
さくらは、北斗と顔を見合わせて笑った。
その時玄関から、ただいまーと元気な声が聞こえてきた。
「あ、穂高帰ってきたみたいね」
北斗が部屋から出ていき、祖父母と穂高を連れて戻ってきた。
「まー、可愛らしい!」
「ほんとに。こりゃまた、美人さんじゃなあ」
目尻を下げる祖父母の後ろで、北斗に抱かれた穂高が目を丸くする。
「あれー?あかちゃんだ!」
「そうだよ。穂高の妹だ」
「えー、いつきたの?」
皆は、ははは!と笑い出す。
「穂高が遊んでるうちにね。それより穂高、お昼ごはんどうしたの?」
「しょうちゃんちで、おこのみやきたべたー」
「そうなの、良かったね。あとで翔ちゃんのお母さんにお礼の電話しておくわ」
さくらがそう言うと、北斗が口を開く。
「あと、赤ちゃんが産まれたってこともね」
「あはは!そうね」
田舎ならではの、なんともゆるい会話に、さくらは思わず笑ってしまう。
すると、心の中に声が聞こえてきた。
『さくら、おめでとう!』
『無事で良かった、本当におめでとう!』
(ありがとう!はなさん、尊さん。これからも私達を見守っていてね)
さくらは、腕に抱いた赤ちゃんと穂高、そして皆の顔を見渡して微笑んだ。
和室に大きなシートを広げて、出産に備えた準備を始めた。
さくらは、病院で健診を受け、問題ないから自宅出産でも構わないと言われ、そうすることにしたのだった。
「あら、子宮口も随分開いてるわね。経産婦さんだし、この分だと、夕方には産まれるかな」
「ええ、ほんとに?まだ全然痛みも強くないけど…」
だが、昼食を食べてからは、そんな余裕はなくなった。
陣痛の波が強くなり、さくらは北斗の手を握りながら痛みをこらえる。
「はい、そろそろいきんでもいいですよー」
助産師に言われ、さくらは大きく息を吸ってお腹に力を入れる。
赤ちゃんが、どんどん下がってくるのが分かり、さくらはその動きに合わせるように、ふーっと長い息を吐く。
「上手よー。はい、もう一回」
「さくら、頑張れ!」
そう言って励ます北斗に頷くと、さくらはまた大きく息を吸った。
グーッとお腹の下の辺りに力を込めると、助産師が、もういいわよ、力を抜いてと言う。
そして間もなく…
「ホギャーホギャー!」
「元気な女の子よ。おめでとう!」
さくらの目から、涙がこぼれる。
「さくら、ありがとう!よく頑張ってくれた」
北斗も感極まって声を震わせた。
助産師が赤ちゃんをタオルに包んでさくらの胸に抱かせてくれ、二人で顔を覗き込む。
「可愛いなあ」
「うん。穂高に似てるね」
「ああ。でも、目と口がさくらにそっくりだ」
「そう?北斗さんにも似てるわよ」
すると、助産師が笑う。
「どっちにも似てるわよ。だってあなた達二人の赤ちゃんなんだから」
「確かに」
さくらは、北斗と顔を見合わせて笑った。
その時玄関から、ただいまーと元気な声が聞こえてきた。
「あ、穂高帰ってきたみたいね」
北斗が部屋から出ていき、祖父母と穂高を連れて戻ってきた。
「まー、可愛らしい!」
「ほんとに。こりゃまた、美人さんじゃなあ」
目尻を下げる祖父母の後ろで、北斗に抱かれた穂高が目を丸くする。
「あれー?あかちゃんだ!」
「そうだよ。穂高の妹だ」
「えー、いつきたの?」
皆は、ははは!と笑い出す。
「穂高が遊んでるうちにね。それより穂高、お昼ごはんどうしたの?」
「しょうちゃんちで、おこのみやきたべたー」
「そうなの、良かったね。あとで翔ちゃんのお母さんにお礼の電話しておくわ」
さくらがそう言うと、北斗が口を開く。
「あと、赤ちゃんが産まれたってこともね」
「あはは!そうね」
田舎ならではの、なんともゆるい会話に、さくらは思わず笑ってしまう。
すると、心の中に声が聞こえてきた。
『さくら、おめでとう!』
『無事で良かった、本当におめでとう!』
(ありがとう!はなさん、尊さん。これからも私達を見守っていてね)
さくらは、腕に抱いた赤ちゃんと穂高、そして皆の顔を見渡して微笑んだ。