婚約破棄された公爵令嬢は冷徹国王の溺愛を信じない
 ルチアの体は疲れているのに目は冴えていて、これからのことを考えたいのに、どうしても過去のことを思い出してしまっていた。

『──なんて可愛げのない女だ! ルチア・ショーンティ! やはりお前は噂通りの悪女だな!』
 建国記念のパーティーで、婚約者だった王太子のジョバンニにそう怒鳴りつけられたときには驚いた。
 その少し前には一方的に婚約を破棄すると宣言されたばかりだったのだ。
『私はたった今、皆様が見ている前で殿下と十年前に交わした約束を──婚約を一方的に破棄されました。それなのになぜ私が責められなければならないのでしょうか?』
『それは……お前の態度が悪いからだ!』
『態度が悪い?』
『そ、そうだ。本当に血も涙もない女だな。なぜ私がお前との婚約を破棄したかわかっているのか?』
『そちらにいるバロウズ侯爵家のお嬢さんと結婚されたいからでしょう? たった今、そう宣言されたではないですか』
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