婚約破棄された公爵令嬢は冷徹国王の溺愛を信じない
 そんなルチアに同情し、慕っていてくれた使用人たちは保障もなく解雇され、取引していた商人たちは契約を解除された。
(お父様やお兄様をもっと上手く立てるべきだったのよね……)
 ルチアはころんと寝返りを打ってため息を吐いた。
 何が正解だったのかわからない。
 それでも、慕ってついてきてくれた使用人たちがこれ以上苦労しないようにする責任がルチアにはある。
 商人たちにもいつか恩返しをしたい。
 そのためにも、ルチアはここで──このバランド王国で居場所を見つけなければならないのだ。
(とりあえず出しゃばらず、陛下の邪魔をせず、求められる妻の役目を徹底する。……持参金目当てだから本当はもう用なしなんだろうけど、さすがにすぐに殺されたりは……しないはず)
 使用人の皆がこの城できちんと暮らしていけることを確認するまでは死ねない。
 それだけがルチアには心残りだった。──本当はもっと願いはあるが。
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