婚約破棄された公爵令嬢は冷徹国王の溺愛を信じない
 嫁ぐ前に最悪の場合を考えて遺言状もきちんと用意して、信頼できる者に預けている。
 ひとまずの目標を確認したところで、ルチアは夢の中へと入っていった。

  * * *

 馬の嘶(いなな)く声、低い声での話し声で目が覚めたルチアは、ゆっくりと体を起こした。
 どうやら窓の外──前庭に人が集まっているようだ。
 ぼんやりしながらルチアがベッドから出ると、その気配を察したのかマノンが洗面器を持ってきてくれた。
「おはようございます、ルチア様」
「おはよう、マノン」
「さすがお早いですね。疲れていらっしゃるでしょうに、今日くらいはもっとごゆっくりされてもよろしかったのではないですか?」
「これはもう癖のようなものね。それとも、悪女ルチア・ショーンティに早起きは似合わないかしら?」
「またそのようなことを……。そんな大嘘をご自分で認めるようなことはおっしゃらないでください」
「そうね」
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