婚約破棄された公爵令嬢は冷徹国王の溺愛を信じない
「ありがとう! それじゃあ、さっそく城内の探検をしたいわ!」
「ルチア様……」
 元気よく答えたルチアに、マノンは呆れたようにため息を吐く。
 お互いわざとらしくはあったが、それに触れるものは誰もいなかった。
「それでは、案内してくれる者を頼んでまいります」
「ええ、お願いね」
 朝食が運ばれてきたところで、マノンが断りを入れて出ていった。
 マノンも他の使用人たちも、今のところこの城で働きにくさは感じていないようだ。
 ルチアはほっと安堵して、食事を始めた。

  * * *

 ジュストはゆっくり馬を走らせながら、先ほどのルチアのことを思い出していた。
 朝陽を浴びて柔らかそうな長い髪を輝かせ手を振る姿が脳裏に焼きついて離れないのだ。
 あれでは悪女どころか、朝を司る女神のようだった。
「──ジュスト様、どうかされましたか?」
「何がだ?」
「笑っていらっしゃるから」
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