婚約破棄された公爵令嬢は冷徹国王の溺愛を信じない
「そうか?」
 ジュストと並行して馬を走らせるのは、腹心の部下であるニコルである。
 ニコルに笑っていると指摘され、自覚のなかったジュストは急ぎ表情を引きしめた。
 そんなジュストは珍しく、ニコルは驚いたようだったが、すぐにニコニコ笑う。
「奥方のことでも考えていらしたんですか? 先ほどのお見送りには驚きましたよね」
「……確かに、驚きはした」
「ですよねー。昨日の噂通りの悪女っぷりな感じとは違って、今朝は何ていうか……いい感じ?」
「ニコル、お前はもう少し語彙を増やせ」
「ええ?」
 今のニコルは少年のように見えるが、戦場に立てば悪魔のようだと恐れられている。
 この視察では留守番をしているもうふたりの部下とともに、バランド王国には四人の悪魔がいるともっぱらの噂だった。
「それで、僕の語彙力は置いておいて、これからどうされるんですか?」
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