婚約破棄された公爵令嬢は冷徹国王の溺愛を信じない
 前世のルチアはいつも我慢して笑顔を浮かべ、聞き分けのいい素直な子を演じていた。
 その結果、得られたのは『二番目』の立場。
 家族には『お姉ちゃん』として扱われ、学校では先生たちの記憶に残らない扱いやすい普通の子だった。
 恋人ができても、面白味がないと振られ、そもそもが付き合っていなかった──ただの浮気相手だったりもした。
 職場では与えられた以上の仕事をしていても、評価されることはなかったのだ。
 十二歳のときに、それらを思い出したルチアは喜んだ。
 今世のルチアは公爵令嬢で王太子の婚約者。妹もいない。
 こんなに恵まれた立場なら、きっと好きに生きることができる。
 なりたい自分になろうとルチアは頑張った。
 その結果が『可愛げがない』だそうだ。
 父にも兄にも、婚約者だった王太子にもよく言われた言葉である。
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