婚約破棄された公爵令嬢は冷徹国王の溺愛を信じない
 前世で読んだ物語のようにみんなに好かれるお姫様になろうと、みんなで幸せになろうと欲張りすぎたらしい。
(めでたし、めでたし。なんて、物語の中だけよね。現実はこんなにも甘くないんだから)
 手を取りながらもルチアを気遣うことなく足早に進むジュストをちらりと見る。
 それから軽く振り向いて、ジュストの部下──同じように〝悪魔〟だと恐れられる三人の将軍を見てから前に向き直った。
 これから葬儀だと言われても納得するくらいには、三人とも重い雰囲気をまとっていた。
(別にいいわ。もう期待なんてしない。ただ私を慕ってついてきてくれたみんなだけは絶対に苦労させないようにしよう)
 ルチアはそう強く決意して、何の飾りもされていない礼拝堂へと入っていった。 
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