愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする
「それは困る。これは女物のハンカチで、俺では使えない。返品はできないし、女兄弟もいない。母の趣味でもないんだ。だから萌ちゃんに受け取ってもらいたいんだけど」

「……っ！　そんな言い方、ずるいです」

　そう言われては、受け取らないわけにはいかなくなる。

「ずるくてけっこう。萌ちゃんに使ってほしくて選んで買ったんだから受け取ってほしい」

　私のために選んでくれた。その言葉が嬉しくて胸が熱くなる。

「ありがとうございます。……大切に使わせていただきますね」

　遠慮がちになりながらも受け取って感謝の思いを伝えると、遼生さんは嬉しそうに目を細めた。

「ありがとう」

　優しい笑顔に私の胸は高鳴り、なぜか苦しくなる。

「送るよ」

「は、はい。ありがとうございます」

　先に歩き出した彼にワンテンポ遅れて歩を進めると、遼生は私の歩幅に合わせてくれて、隣で肩を並べる。この何気ない優しさに私の胸は高鳴るばかりだった。

　後日、友達に遼生さんと食べに行ったレストランの話をしたところ、すごく驚かれた。なんでもなかなか予約が取れないことで有名なレストランらしく、一番安いコース料理でも一万五千円はすると言う。

　あの夜食べた料理は、どれも高級食材を使用していたことを考えると、かなりの金額だったはず。

　それに遼生さんがプレゼントしてくれたハンカチは、高級ブランドのものだった。ハンカチだけで数万円はする。
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