愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする
 でもそんな未来はきっと訪れることはないだろう。私と凛のことを好いてくれているのは、彼に記憶がないからだ。

 記憶を取り戻したら、遼生さんの態度は一変する可能性がある。そうなったら間違いなく凛は傷つくはず。

 そう思うと早くに遼生さんと離れたほうがいいに決まっているのに、凛の気持ちを聞いたらできそうにないよ。

「やっぱりー! じゃあママも凛と同じだね」

「そうだね。じゃあ保育園に行く準備をしようか」

「うん! 凛、着替え終わったらママのお手伝いをしてあげる」

「本当? ありがとう」

 頭を撫でながら褒めれば、凛は嬉しそうに笑う。

 この子の笑顔をずっと守っていきたい。この思いは変わらないのに、その方法はどれが正しいのかわからなくなる。

 着替えを済ませてふたりでキッチンへと向かい、まずは凛のお弁当作りに取りかかる。昨日作ってすっかり好きになったようで、率先しておにぎりを握り始めた。

 その様子を見守りながらおかず作りを始まる。少しして明子さんと文博さんが仕込みを終えて戻ってきた。
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