愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする
「凛ちゃんの迎え?」

「うん。今日は早めに行こうと思って」

「そっか」

 いつもは夕方の四時から五時の間くらいに行くけれど、今日は仕事が思うように進まず、三時に家を出た。

「だったら少し時間ある?」

「あるけど……」

 すると和泉君は店の奥にいる彼の父である店長に声をかけた。

「父さん、少し店を空けてもいいかな?」

「なにー! これから忙しくなる時になにを言って……っ!」

 険しい顔で大きな足音を立てて奥から出てきた店長は、私を見るなり顔を綻ばせた。

「萌ちゃんじゃないか! おう、店は任せてゆっくりふたりでお茶でもして来い」

 店長もなにかと私と和泉君をくっ付けようとするひとりだ。あっさりと許可が下り、和泉君は苦笑いしながら「行こう」と私に声をかけた。

「すみません」

 店長に小さく頭を下げて和泉君と青果店を出ると、背後から店長が大きな声で「ゆっくりデートしてこいよー」と、とんでもない言葉が聞こえてきた。

「悪い、父さん変なことを言って」

「ううん、大丈夫」

 もしかして和泉君も家で私との仲を色々と言われているのかな? だったらなんか申し訳ない。

 そんなことを考えながら和泉君の後を追って向かった先は、よく凛と遊びに来る公演だった。

 和泉君は真っ直ぐにブランコへ向かい、ふたつあるブランコに座った。そして私にも座るよう促す。
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