愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする
「あの事故ってなんですか? 遼生さんが記憶を失ったことに関係しているんですか?」

 知りたくて聞き返すと、隣にいた女性が「そうよ」と答えた。

「遼生さんは私と結婚して碓氷不動産を継ぐはずだったのに、あなたのせいでその道を絶とうとしたの。でも神様はちゃんとわかっていたのよ、あなたとでは幸せになれないって。だから遼生さんに記憶を失わせたんだわ」

 じゃあこの人が昔、遼生さんが言っていた婚約者ってこと?

 話についていけない中、彼の母は彼女を自分のほうに引き寄せた。

「こちらは神楽坂銀行のご令嬢、神楽坂珠緒(かぐらざか たまお)さんよ。遼生に見合う女性であり、私が認める唯一の遼生のお嫁さんなの」

 神楽坂銀行といえば誰もが知るメガバンクだ。そう、だよね。遼生さんに見合う女性は神楽坂さんのような家柄の女性しかいない。

 それでも私は遼生さんを諦めることができないよ。

「あなたも納得して遼生と別れたはずなのに、なぜまた現れたの?」

「お義母様、やはりあんな優しい別れのメッセージでは諦められなかったのではないですか?」

「そう? シンプルで一番傷つき、もう二度と遼生に近づかないと思ったのに」
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