愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする
 萌はどんな思いで俺と接していたのだろうか。母や珠緒が勝手に別れのメッセージを送ったとはいえ、俺は駆け落ち当日に裏切った男だと思われていただろう。

 文句を言われたって仕方がないのに、知らないフリをして接してくれていたよな。

 改めて彼女の優しさに愛おしさが込み上がる。しかし、すぐに凛ちゃんの存在を思い出した。

「凛ちゃんはいったい誰の子供だ……?」

 萌の子供であることに間違いはないはず。肝心なのは相手だ。たしか凛ちゃんは三歳って言っていたよな? それなら俺と別れてすぐにできた子供になる。いや、俺との間にできていた可能性も捨てきれない。

 俺の子であってほしいが、もしそうではなかったら……?

 想像すると怖くなるが、記憶を取り戻す前は自分の娘のように愛そうと決めたじゃないか。

 そうだ、たとえ誰の子であっても萌の子供には変わりない。問題は俺自身だ。

「萌に会いに行く前にすべてを整理しなくてはいけないな」

 また萌を傷つけることしかできない。昔は駆け落ちすれば、萌といつまでも幸せに暮らせると思っていたけれど今は違う。
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