愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする
 初めて聞く父の話に、俺は口を挟むことなく耳を傾けた。

「それが間違いだと気づいたのは、お前が事故に遭ったと聞いた時だった。秘書から意識不明だと聞き、頭の中が真っ白になったよ。病院へ向かう途中、ただお前の無事を願った」

 にわかには信じがたい話だけれど、父が嘘を言っているようには見えない。

「結婚に反対したのも、今思えば会社を継ぐ際に後ろ盾になる相手と結婚してほしかったからだった。それがお前の幸せだと疑わなかったんだ」

 父は父なりに、俺の幸せを考えてくれていたんだ。だから萌との結婚にあれほど反対したのだと今なら理解できる。それならはっきりと自分の気持ちを伝えなくてはいけない。

「俺の幸せは自ら人脈を広げ、自分の力だけで会社を大きくて、心から愛する人と家庭を築くことだ。……俺が思う幸せを手に入れることが、これまで育ててくれた父さんと母さんへの親孝行だとも思っている」

 ふたりなりに俺の幸せを思って婚約者を用意し、質の良い教養を与えてくれたのだろう。
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