愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする
「だからといって、昔のように父さんと母さんに認められないから駆け落ちするようなことはしない。ふたりに祝福されないと萌を幸せにできないからさ」

「……そうか。なら、早く結婚の約束を取り付けてこい」

「えっ?」

 意外な言葉に聞き返せば、父はふっと笑った。

「今のお前には安心して会社を任せられる。そんなお前にはなんの後ろ盾も必要ないだろう。むしろ必要なのは寛げる家庭だ。母さんはあとで説得すればいい。だから早く彼女に記憶を取り戻したことを伝えてやれ」

 それはつまり、父は俺と萌の結婚を認めてくれたってことでいいんだよな?

「秘書に営業部長にお前が今から北海道へ向かい、明日まで戻らないと言伝を頼んでおいた。残りの営業周りには他の者を向かわせたから」

 そう言って父はポケットから封筒を手に取り、俺に渡した。

「新千歳空港行きのチケットだ。明日、プロジェクトの進捗状況を確認したら夕方の便で戻ってくればいい」

 俺の中で父は常に寡黙で笑顔など記憶にないほどいつも硬い表情をしていた。そんな父が頬を緩めて微笑む姿に目を疑う。
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