愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする
 彼との出会いを話すと、友達はみんな口を揃えて「素敵」「ロマンチック」「まるでドラマみたい」と言う。実際に私もそう思っていた。

 幼い頃に母に劇団四季のミュージカルを見に連れていってもらってからというもの、どっぷりとはまってしまった。
 中学生まではお小遣いを貯めて、それでも足りないから家の手伝いをしてチケットを購入しては頻繁に通うほど。

 高校生になってからはアルバイトができるようになったから、周りがオシャレにお金をつぎ込む中、私はすべてチケット代に注いでいた。
 それは大学生になってからも変わらなかった。専攻は大好きな英語をもっと学びたくて、英語学科を専攻。忙しい勉強の合間を縫って大学生になってからもアルバイトは続けた。

それに大学生になると時給もアップし、収入が増えた分、時々はご褒美に一番いい席で鑑賞することもしばしば。

 忘れもしない真夏の暑い日。土曜日の夕方の一番いい席を予約した公演は、始まったばかりの演目。
 なかなかチケットが取れず、二ヶ月間待ってやっと見ることが叶う。

 一番いい席といっても、その中でも前列と後列がある。こればかりは仕方がない。だけれど、今回はなんと真ん中の前から二列の席。

 真正面の間近で見られるとあって、今日が楽しみでたまらなかった。
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