愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする
「ママ、目、大丈夫?」

 次の日の朝。案の定、泣いたせいで目が腫れてしまった。温めてメイクでカバーしたものの、着替えを終えてキッチンに入ってきた凛には見抜かれてしまったようだ。

「痛いの?」

 心配する凛を安心させるように彼女と目線を合わせた。

「ううん、痛くないよ。ちょっと痒くて強く擦っちゃっただけなの。これからは気をつけるね」

「本当?」

「うん」

 凛の頭を撫でて朝食とお弁当の準備を再開した。

 朝の仕込みを終えた明子さんと文博さんにも気づかれちゃったけれど、凛と同じように説明するとどうにか納得してくれた。

「そういえば、ショッピングモールの近くに大型温泉施設を作るらしいぞ」

「そうなの? ますますこっちに人が来なくなるわね」

 朝食中、文博さんの話を聞いて明子さんはため息を漏らした。

「だけど、温泉に来るくらいならうちの商店街にも立ち寄る観光客がいる可能性もあるんじゃないかって話になって、会長たちはこれを機に客を呼び込む作戦を考えようとしている」

「そんなうまい話があるわけないじゃない」

「わからないだろ? 現に外国人観光客が物珍しさにうちの商店街に来るようになったじゃないか。空き家になっている店を低価格で販売したり貸し出したりして、新たなテナントを募集しようかって案も出ている」

 文博さんの話を聞いて、夢が広がる。

 決して簡単なことではないけれど、もしかしたら以前よりも商店街は活気に満ちるかもしれない。
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