愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする

　様々な感情が込み上げてきて、やり場のない怒りを鎮めるようにギュッと手を握りしめた。

「すみません、予定のお時間より早く来てしまい」

「いいえ、こちらこそお忙しい中ご足労いただき、本当にありがとうございます」

　腰を低くして頭を下げる文博さんに戸惑ってしまう。そんな私に気づいたのか、遼生さんはスーツの内ポケットに入っていた名刺入れから一枚取り、私に差し出した。

「ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。はじめまして、この度、商店街の再生プロジェクトを担当することになった碓氷不動産から来ました、碓氷遼生と申します」

「はじめまして……？」

　思わず聞き返してしまった。だって〝はじめまして〟だなんて――。

　知らないフリをして言っているなら、なんて残酷な言葉だろうか。本当に気づいていないの？　毎日のように連絡を取り合い、十分でも会えるとわかれば会っていたのに忘れてしまったの？

　名刺も受け取らずにジッと彼を見つめていると、次第に目頭が熱くなる。すると遼生さんは真剣な面持ちで私を見つめ返した。

「もしかして四年前、俺と関りがありましたか？」

「えっ？」

　思いもよらぬことを聞かれ、返答に困る。

　四年前に関わりがあったかを聞くなんて、どういうこと？