愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする
「よかった、ありがとう。じゃあさっそく連絡先を交換してもいい?」

「はい」

 それから私たちはスマホで連絡先を交換し、別れ際に改めて自己紹介をした。

「碓氷遼生さん……」

 帰宅途中にさっそく数回メッセージでやり取りをした。

 遼生さんは私より三つ年上の二十二歳で、大学四年生らしい。私が年下と知ると彼は【萌ちゃんって呼んでいい?】と聞いてきた。

 男性に〝萌ちゃん〟と呼ばれるのは親族以外では初めてで、それだけでドキドキしてしまう。

 遼生さんとは次の週の私がバイトのない金曜日の夕方に会う約束をした。それまでの間は、頻繁にメッセージのやり取りをして、お互いのことを教え合っていた。

 そのおかげもあってか、次に会った時はすぐに緊張は解けて楽しく話をすることができた。

 ハンカチのお礼と言って彼が予約してくれたのは、路地裏にある隠れ家的なフレンチレストランだった。

 カジュアルスタイルの店ながら、どの料理も美味しくて自然と話が弾んだ。

「へぇ、じゃあ萌ちゃんは小さい頃から劇団四季のファンなんだ」

「はい! お小遣いを貯めてよく見に行っていました」

「わかる、俺もそうだった。お小遣いが足りない時は親にねだったりしてさ」

「私もです」

 共通の趣味である劇団四季の話から始まり、なぜ遼生さんがあの日の舞台を見て涙を流したかも教えてくれた。
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