真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬致します。婚約破棄しましょう
「……いえ、早くサインを書いて貰い、この場から立ち去り悲しみにくれようと思っております」
「ここにサインをすると君との関係は終わってしまうのだぞ?」
「えぇ、仕方がございません、真実の愛にわたくしは敵いませんもの……」
「……君と長い年月を過ごす上で見過ごした愛と言うものがあるのかも知れないと思い始めてきたよ」
「……そんな……それは子爵令嬢に悪うございます。真実の愛を引き裂くなんてわたくしには出来ません!」
「君のことを嫌いになったわけではないんだ」
「わたくしには勿体ないお言葉でございます」
「一度じっくり考えることに、」
「はい、ペンを握って、握り方はこうですよ?」
優しくペンを握らせる
「君の手はまるで白魚のように美しいな」
「まぁ、ありがとう存じます、ここにお名前を書いてくださいませ」
「君は文字も美しいのだな……」
「まぁ! ありがとう存じます。フルネームでお書きくださいませ」
「私は何をさせられようとしているのだ……」
「お名前を書くだけですわよ?」
「なんのために?」
「……真実の愛のためですわよ?どうされましたの?殿下?」
「いや、そもそも、だな……」