真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬致します。婚約破棄しましょう

「おい、アニエス、セレスティーヌになんの用事だ!」

 はぁはぁと呼吸を整えるサロモン。

「夜会は誰と行くの?誘われてないんだけど!セレスティーヌ()()を誘ったの?」

「何度も言わせるな!セレスの名を気安く呼ぶな!()()付けをするな!」

 恐ろしい形相でアニエスを見るサロモン。

「悪いセレス、気分を害しただろう?」

 顔色が悪いサロモン。

「いえ、殿下が来られましたのでわたくしはこれで失礼します」

 頭を下げて去ろうとする。

「まってくれ!」

 腕を掴まれるセレスティーヌ。

「何かございますか?」

 掴まれた腕が痛む。

「誤解だ! 頼む、話を聞いてくれよ…」

 誤解とはなんのことだろうか?二人の関係に口を出すつもりは全くない。

「……殿下とお話する事はございません、まずはお二人で話し合いをされては如何ですか?何か誤解があるようですわね」

 サロモンと、アニエスを交互に見て、ニコリと微笑む。

「わたくしは部外者ですのよ? 巻き込まないでくださいまし」

 捕まえられた腕をなんとか解き、見苦しくみえないように場を去る……掴まれた腕が痛む。

 サロモンの顔色が悪かった。少し痩せたようにも見えたが関係ない。

 いつも身なりはきちんと整えていたのだが、走ってきたせいか制服も髪型も乱れていた。子爵令嬢への愛、故の行動だと信じたい。

 なんとか授業を終え、逃げるように馬車に乗る…疲れた……
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