悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「それならユーリは俺と一緒に街に行ってみないか?」
「え、街へ? 皇城から出てもいいの?」
「俺と一緒なら問題ない。俺の見えないところでなにかあっては後悔するから、外出を禁止しているだけだ」
「あ、そうだったんだ。てっきり……」

 うんと言うまで出してもらえないのかと思っていたわ。

「てっきり?」
「ううん、なんでもないの。それじゃあ、私とフレッドは街で聖女の情報がないか調査してくるわね」
「うん、お願いね! いいなあ〜、好きな人とデートかあ……わたしもしてみたいなあ……」
「え、ミカは好きな人がいるの?」
「うーん、好きというか、神というか、最推しなんだけどね……まるで相手にされてないんだよねー」

 力なく笑うミカに胸がズキズキと痛む。昔からミカはこうやって、つらい時ほど私に心配をかけまいと笑うのだ。

「そうなの……」

 今度じっくり話を聞いてみよう。ミカがこんなに悩んでいるなら、姉として力になりたい。今は立場もなにもかも違うけれど、ミカエラの中に美華は確かに存在するのだ。

「では早速だが街へ行くか?」
「え、でもフレッドは大丈夫なの? 皇太子としての仕事があるんじゃないの?」
「そうだな、今は婚約者を捕まえるのが最重要項目だ」
「あ、そうですか。失礼しました」

 やぶ蛇だった。

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