悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「本当、バッカじゃないの! 私があの店主の娘のふりして会社にクレームの電話を入れたの! それで担当を奪ってやったのよ!! それが会社にバレて、先輩も死んだって広まって、私ひとりが悪者になったんだから!! クビになった日に、会社の前で店主に待ち伏せされて刺されたの!! 全部先輩が死んじゃったからよ!!」

 そうだったんだ……あのクレームの電話は、宮田さんだったのか。それなら私がやってきたことは間違いじゃなかった……?
 宮田さんが刺されたと聞いたのに、そんなことを考えてホッとした自分に自己嫌悪する。でもだからといって、宮田さんのやったことを許せるわけない。心の奥底から沸々と怒りが込み上げる。

「先輩が死んじゃったから、全部私のせいになって殺されたのよ!!」
「……それは、私のせいではないよね?」
「……っ!」
「店主さんのお嬢様を騙ってクレームの電話を入れたのも、店舗のリフォームを満足してもらえるようにできなかったのも、宮田さんの責任でしょう?」

 怒りを抑えつつ、私は冷静に指摘した。私はこうやって後輩も育ててきたし、仕事をこなしてきたのだ。
 そもそもあの店舗は職人仕込みの和食が売りの飲食店だ。ガーリーでかわいくしたところで客層には刺さらない。明らかにリフォームの提案に問題がある。

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