悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ!!」

 宮田さんは耳を塞ぎ、ソファーの上で丸くなる。震えながら、私のせいじゃない、と小声で呟いていた。しばらくすると、バッと顔を上げてニヤリと気味悪く笑った。

「だからね、皇太子は私がもらうわ」

 宮田さんの言葉で、前世の恋人を奪われた過去がフラッシュバックする。あの時の深い悲しみも、喪失感も、どうしようもないほどの孤独感も。

「ダメよ。フレッドは私の専属護衛だもの」

 私は気が付いたらそう口にしていた。ただ、私の大切な人だから渡したくないと思った。そうだ、フレッドは私の大切な……騎士だから。

「はあ? 先輩、皇太子に専属護衛なんてやらせてるのぉ? あははははは! ウケるんだけど!!」
「だから、フレッドのことはあきらめて」
「護衛の代わりはいるけど、皇太子の代わりはいないから無理に決まってるでしょ!」
「…………そう」
「それにぃ、皇太子だってあんたみたいなババアより、私みたいな若くてかわいい女の方がいいでしょ?」
「…………」

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