悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「私ねぇ、本当は先輩が大っ嫌いだったの! だからいろんなものを奪ってやったの!! あはははは、ねぇ、今どんな気持ち? ねぇ!」

 そこまで……? そこまで嫌われていたのか、私は。それで恋人も、仕事の成果も、上司からの信頼も宮田さんに奪われたの?

「とにかく、私は皇太子と結婚するのよ! 先輩はさっさとあきらめてね〜!」

 ——フレッドをあきらめるって、なに?
 冗談じゃない。そんな理不尽な略奪に屈したくなんてない。フレッドは私の騎士なのだ。
 それにこの世界は、もう前世ではないのだから。

「へレーナ。貴女が私の大切なものを奪うというなら、それは覚悟があってのことでしょうね?」

 私は静かにソファーから立ち上がった。心に渦巻く激情を隠さず、へレーナに視線を向ける。

「は? 覚悟とか意味わかんないし!」
「……私からフレッドを奪うのは許さない。絶対に」

 それだけ言って、へレーナの部屋を後にした。


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