悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「へレーナ様、寒いのですか?」

 私を抱き終えた神官が、背中から抱きしめながら毛布を肩までかけてくる。

「ふふ、大丈夫よ。いいことを思いついたの。ふふふっ」
「ご機嫌が回復されたようで、なによりでございます」
「そうね、久しぶりに最高の気分だわ」

 どうして今まで思いつかなかったのだろう。こんな簡単なことだったのに。

「ねえ、明日もう一度皇帝に会うわ。約束を取り付けてきて」
「明日ですか? 承知しました」

 身だしなみを整えた神官が、準備のために寝室から出ていく。気だるい身体を起こして明日、皇帝に会う時の衣装を考えた。

「そうだ、せっかくだから私の魅力を存分に引き出せるドレスにしよう。修道服なんてダッサいし」

 私は鼻歌を歌いながら、別の神官に声をかけて明日の準備を進めさせた。



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