悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 翌朝、神官たちに朝からお風呂の準備をさせて全身を磨きあげた。パステルブルーのドレスに身を包み、ピンクダイヤモンドのアクセサリーで耳と首元を飾る。髪もアップにしてピンクダイヤモンドの髪飾りを刺した。
 完璧に準備を整えて謁見室へと向かった。

 私の華やかな容姿に相まって、ヒラヒラとフリルが揺れ可憐さに拍車をかけているはずだ。すれ違う貴族や騎士たちが驚いた様子で私に視線を向けている。

 気分よく謁見室までやってきて、昨日と同じようにレッドカーペットを優雅に歩いた。

「聖女へレーナ。本日は火急の用件ということだが、なにかありましたかな」
「ええ、私決めたの」
「なにを決めたと?」
「私がこの世界の女王になると決めたの」
「いったいなにをおっしゃっているのか……」

 話のわからない皇帝に、私は身体に渦巻く闇の力を解放してみせた。
 私の周囲に黒い霧が広がって、謁見室に広がっていく。

「……っ!」
「陛下! 陛下をお守りしろ!!」

 近衛騎士たちが皇帝を守るように立ち並んだ。そんなことをしても意味がないのに、必死な様子に笑いが込み上げる。

「ふふっ、あははははは! それで皇帝を守ったつもり?」

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