悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「お兄様、そういうのは後にして。それより聖女はお兄様と結婚したがってるのが問題よね」
「ああ、それか? 俺が皇太子を返上すれば興味をなくすだろうけどな」
「まあ、それは最終手段よね」
「ミカまで……! そんなことしたら皇帝陛下と皇后陛下が悲しむからダメよ。私がいなくなれば済む話だわ」

 二週間前にフレッドにも言ったけど、それだけじゃない。それなら最悪私が婚約者候補から身を引けばいいだけの話だ。

「だってあの映像見ちゃったら、あの聖女は性格悪すぎて無理でしょ。あんなのが皇后になったら、帝国はあっという間に滅びるわ。お姉ちゃん以上の適任者はいないから」
「そもそも俺があの聖女を受け付けない。ユーリをあんなに悲しませる人間は俺の敵だし、手放す気もない」

 正直、ふたりの言葉がとても嬉しい。私みたいな仕事しかしてこなかった枯れ切った女でもいいのだと言ってくれる。これでダラの時間が確保できるなら問題ないんだけど。そこが悩みどころだ。

「それはお兄様に完全に同意するわ。それならあの聖女の裏の顔を暴いて皇后には不適格だと追い込むしかないわね」
「そうだな……影を使うか。まあ、物的証拠がなかったら状況証拠だけでも追い詰めるか」
「大丈夫よ。さっきの映像を見た限りじゃ、そんなに賢くなさそうだし絶対に証拠は集まるわ」

 心の底から思うけど、この兄妹が敵じゃなくて本当によかったわ……!!

 だけど、そんな平和な時間はあっけなく終わりを迎えた。



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