悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 翌日、午前中は三人で会議をして、午後から証拠集めのためにフレッドと街へ出ようと思った時だ。影の中から突然リンクが現れ、フレッドの前で膝をつき声を抑えて話しはじめる。

「アルフレッド殿下、皇帝陛下が聖女に拘束されました」
「……それは事実なんだな」
「はい」

 リンクの報告は突拍子もないのに、フレッドの様子から現実なんだと理解する。
 聖女へレーナがそんな暴挙を起こしたなんて、考えられない。聖女は確かに敬われる存在だけど、他人に危害を加える能力はなかったはずだ。

「俺が聖女を捕らえ——」

 扉に向かって歩き出したフレッドの前に、リンクが両手を広げて止めに入る。漆黒の瞳は真っ直ぐにフレッドを見つめていた。

「アルフレッド殿下。すでに皇帝は拘束され、皇城が制圧されるのも時間の問題です。さらにユーリエス様は指名手配
され、絵姿がかなりの速さで広まっています。今は姿をお隠しになるのが最優先です」
「ユーリが指名手配だと……!?」
「え、じゃあ、私このままここにいたら……」
「聖女の手の者に捕まり処分されるでしょう」

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