悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「ここまでは指名手配書が届いていないようです。急いでコンラッド領へ向かい、辺境伯に会いましょう」

 リンクが先頭を歩き、私とフレッドがそれに続いた。ここでは追われていないと聞くとホッとする。気が緩んだのか、突風に煽られてフードから黒髪があらわになった。

「あっ……!」
「ユーリ、大丈夫だ」

 すぐにフレッドがフードを被せてくれるが、その直後後ろから馬車が通り過ぎた。繊細な装飾が施され、ぱっと見で高位貴族のものだとわかる。しかも背後から来た馬車ということは、もしかしたら私が帝国で指名手配されているという情報も掴んでいるかもしれない。

 一気に緊張感に包まれ、ジッと馬車の動向を窺った。すると少し先で馬車が止まる。なにもない街道の途中で止まるなんて、馬車の故障くらいしかない。でも止まった馬車にはそんな様子はなかった。

 黒髪は珍しいから目立ってしまうのに、迂闊だった……!

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