悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「それではレイチェル様、お言葉に甘えさせていただきます」

 優雅に上品に微笑むレイチェル様に続いて、私たち三人は馬車へ乗り込んだ。護衛は御者の隣に座り、馬車の中は事情を知った四人になる。最初に口を開いたのはレイチェル様だった。

「それで、いったいなにがありましたの? わたくしはユーリエス様が指名手配されていると聞き、本当に驚きましたのよ。あれだけ誠実な対応をされる方ですもの、きっと陰謀に巻き込まれたのだと思いましたわ」
「……はい、あまり詳しくはお話しできませんが、聖女へレーナの反感を買いまして追われる身となりました」

 それから転生の件は伏せて簡単に状況を説明した。レイチェル様は眉間に皺を寄せて、話をジッと聞いてくれた。

「なるほど。ではユーリエス様、援助を申し出ます。わたくしでできることならば、なんなりとお申し付けくださいませ」
「ですがそれではご迷惑が……」
「いいえ、ユーリエス様が捕まり汚名を着せられる方が許せませんわ。ユーリエス様にご紹介いただいた夫も同じ気持ちになるでしょう。さらに言うなら、このことが影響して化粧水の売り上げが落ちればわたくしにもダメージがございます。わたくしの都合でお助けしていると思っていただけませんか」

 レイチェル様は私が受け入れやすいように、そんな言い方をしてくれた。あの時、誠心誠意気持ちを伝えてよかったと思える。

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