悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 だけど私は原作でフレッドがイリス様に恋をすると知っている。この後イリス様に会ったら、フレッドの気持ちは私から離れていくかもしれない。それもあったから、フレッドのことは護衛なのだと強く思ってきた。
 フレッドは専属護衛だと思えば思うほど、私の心は底なし沼に沈んでいくようにどこまでも落ちていった。



 それから二時間ほどして、コンラッド辺境伯の屋敷へ着いた。レイチェル様が先触れを出してくれたおかげでスムーズにコンラッド辺境伯に会うことができた。

「フランセル公爵令嬢ならびにレイチェル様、こんな辺境の地までようこそおいでくださいました」
「急な訪問をした上、このような格好で申し訳ございません。どうぞユーリエスとお呼びください」
「コンラッド辺境伯様、ご無沙汰しております。先ほどわたくしの護衛が手紙を渡したと思うのですが、その件でよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんでございます。準備は整っておりますので、こちらへどうぞ」

 そのまま応接室へ案内され部屋に入ると、真紅の髪に琥珀色の瞳をした女性が凛と佇んでいる。『勇者の末裔』の主人公であるイリス様が剣を手にして待っていた。

「お待ちしておりました。わたしがイリス・コンラッドでございます」

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