悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 街は少し活気がなくなっているようで、民たちも笑顔が少ないように感じた。わずかな時間でこれだけの変化があるのだ。このままへレーナが女帝として君臨しても、帝国の未来は暗いだろう。

 気を取り直して、街の警備を担当する騎士がいないかと探し歩いた。大通りを歩いて十分くらいたっただろうか。前方からふたり組の騎士がやってくる。私の目の前を通り過ぎようとして、慌てて声をかけた。

「ねえ、貴方たち。私を探しているのでしょう?」
「え? 突然なんですか……?」
「……あっ! もしかして、貴女様は——」

 私は極上のアルカイックスマイルを浮かべる。

「私がユーリエス・フランセルよ。指名手配されていると聞いたけれど、違ったかしら?」

 そして堂々と名前を名乗った。



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