悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 皇城に着くと、すぐさま謁見室へと通された。
 近衛騎士は眉間に深い皺を寄せ、苦悶の表情を浮かべている。目線だけで大丈夫だと伝え、レッドカーペットを進んだ。
 へレーナの前には、両手と両足を鎖で繋がれたユーリが跪いている。

「やっと来たのね、アルフレッド。随分と遅かったじゃない」
「ユーリ……!」
「フレッド……」

 ユーリに怪我がないか見たところ、頬が赤くなっている。瞬間的に怒りの感情が俺を支配した。

「ユーリに手を出したのは、お前か」
「ふんっ、その女が悪いのよ。上から目線でうるさく言うんだから。あんまりうるさいから黙らせただけでしょ」
「フレッド、大丈夫だから」

 作戦通りに——ユーリは口の動きだけで最後の言葉を俺に伝える。
 グッと怒りを呑み込み、聖剣に手をかけて聖女に歩み寄った。

「今すぐユーリの指名手配を解け。それも条件のはずだな」
「ふふっ、私の目的はあの女が泣いて悔しがることなの。これだけじゃ足りないかなぁ〜」
「早く指名手配を解け」

 へレーナはニタリと醜い笑みを浮かべて、俺の胸元に手を伸ばしてくる。胸元から腹筋へ、さらにその下へとへレーナの指が下りていく。触れられるのも嫌だったが、なんとかこらえた。

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