悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「それにしても、本当に整った顔といい身体してるわ……ふふ。夫婦になるんだし、楽しまないともったいないよね?」
「…………」

 服の上から撫で回されて、いつ聖剣を抜こうかと考えて耐え忍んだ。神官たちがものすごい顔で俺を睨むが、だったらへレーナを止めてくれとすら思う。あまりの苛立ちからか、神官たちがへレーナから距離を取り始めた。

「そんな顔してたって、こうすればみんな……え、ちょっと。なんで……!?」
「悪いが俺が反応するのはユーリだけだ」
「……っ!!」
「なんなのあんた! ふざけんなっ!! ちょっと、あの男を連れてきて!!」

 真っ赤な顔で激昂したへレーナは、悲鳴を上げるように叫んだ。神官のひとりが慌てて、深くフードを被った人物を連れてきてユーリの隣に立たせる。

「ほら! 貴方の探していた女はそこにいるわ! もう好きにしていいから早く消えて!!」

 フードを被った人物はジッとユーリに視線を向けている。やがておもむろにフードを外すと、見覚えのある金色の髪がさらりとなびいた。
 その瞳は若葉色でユーリを見つめる視線は、昏く澱んでいる。

「やっと会えたな……ユーリエス! 僕だ、クリストファーだ! 一緒に国に帰って僕と結婚しよう!!」

 あの時、呪いをかけて排除したはずのクリストファーだった。


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